人事インタビュー
株式会社ヨコソー
川部 高志(経営企画部 人事課)
「いや、急にやめたわけじゃなくて、そもそもここ5年くらいやってないんですよ、説明会。」と笑うのは、職サークルイベントには欠かせない存在となっている人気(いや、名物?)人事担当者の川部さん。
「説明会って、その名の通り「説明」する場、つまり一方的なんですよね。説明する側の企業と、説明を聞く側の学生という構図によって学生をお客様扱いしてしまうし、受け身の立場に置いてしまう。よく、「イマドキの学生は積極性がない」なんていう言葉を聞きますが、それって学生が悪いのか?と思うんです。彼らを受け身にさせる環境を作っているのは、自分たち企業側じゃないのか?問題は学生ではなくこちら側にあるんじゃないのか?って。」
川部さんがこんな気づきを得たのは、都内の某喫茶店で真面目そうな就活生がパフェを食べながらスマホで企業説明会を視聴しているのを目撃したことが、ひとつのキッカケだったそうです。「企業側は画面の向こう側で真面目に聞いてくれてるもんだと勝手に思い込んでますからね(笑)。人事としては衝撃的な光景でしたが、就活の当事者である学生にとってはこれが普通なんだなと。こんなにも相手側の状況が見えてない場なんだということを改めて痛感しました。」
株式会社ヨコソーは、創業110年以上の実績を誇り、マンションや集合住宅の大規模修繕事業をメインフィールドとする建設業。本来なら学生に提供できる会社情報は豊富かつ多岐にわたるが、川部さんはあえて説明会を開催せず、就活イベント等で直接接点を持った学生に対して会話の機会を持つところからスタートしているとか。「どんなことを話してるのかって?人それぞれですね。大学生活やアルバイト、サークルなどの話で盛り上がることもあれば、就活相談やキャリア(人生)相談のようになることもある。そんな場を何度か重ねていって、学生側が当社に興味をもってくれた時にはじめて会社のことをお話ししています。」
ヨコソーでは選考フローも1次、2次のように決まりきったものはないそう。過去には内定までに19回(!)川部さんとお話ししたという学生もいたとか。「まぁそれはさすがに極端な例ですけれど、そのくらい会話を重ねてお互い対等に理解した上での内定なら、ミスマッチなんてないですよね。コロナ禍の影響もありオンライン就活が当たり前の世の中ですが、会社のリアルを知ることができない環境を企業側が作っておいて、学生に対して「当事者意識を持ちましょう」なんて言っても持てるわけないし、オンラインの情報だけで人生をかける場所なんて決められないよね、と思っています。」
川部さんにとって、「理想の採用活動」って何ですか?と聞いてみました。
「究極の理想は、お、いいなと思う学生10人と会って、その10人が入社してくれることですよね!それだったら一人30回くらい会う時間作れるかも!(笑)」
応募した学生の中から優秀な人材に合格を出す「選別」ではなく、対等な会話の中で共にゴールに向かってすり合わせをし、成長していく「伴走」。そんな関係が理想だと川部さんはおっしゃいます。
「仕事でも就活でも、効率ってもちろん大事なんだけれど、それって本来は数をこなしてきちんと対応できるようになってから考えるもの。当社は、コロナや時代を言い訳にせずに、手間を惜しまず、あえて面倒くさいことをやっていきたいと思っています。店主のこだわりで、その日のスープが満足できないと店開けないなんていう、めんどくさいラーメン屋みたいな採用がしたいですね!」
「企業はもっと自分たちの情報をフルオープンにしたらいいと思っていて。採用活動が、人事側の都合や理屈だけでできていないか?と思うんですよね。それが、今の採用市場にいて感じる違和感でもあります。自分たちのことだけ考えるのではなくて、イチ企業として就活を通して若者を成長させる、という影響力をもっと創出できるはず。」と川部さん。
「一方で、学生側も、自分に都合のいいところだけに惹かれて活動をしているのではないか?と感じています。まず業界を絞ってから・・・なんていうノウハウにハマってしまったりね。業界に明確なこだわりがあるなら別として、そうでないなら、業界を絞る=選択肢を狭めるだけですからね・・・」
企業が「採用活動」を通じて若者に、そして社会に貢献できることとは何なのか。そんなことを真剣に考え、実際に活動していらっしゃること、まさにこれこそ職サークル協賛企業の鑑!!と感動させられるインタビューでした。学生の皆さんも、今一度「就職活動」が、効率追求や正解探しに陥っていないか、ぜひ考えてみてください。手間を惜しまず頭と体を動かし続けることで、きっとびっくりするくらいの「成長」が待っていると思います。
そんな川部さんですが、ご自身の就活がどうだったか、を伺ったところ、なんと働くのがイヤで、学生時代にバイトで貯めたお金でカナダにバックパッカーにいっちゃったそうです!ご本人曰く「完全に社会人を舐めてました」とのこと。家を離れて生活してみて、やっとこのままじゃダメだ、と気づいて帰国、とにかく、自分自身の根性を叩き直さないとマズイ!という一心で、内定が出た会社の中であえて一番キビシイ会社に入社。今では考えられないほどブラックな会社で働き詰めの日々を送ったとか。
その後、多岐にわたる業界で人事を歴任してきた川部さん、現在はホワイト企業として認定も受けているほどのヨコソーさんで、奥さんとお子さんを大事にする良きパパでもございます。そんな社会人経験、人生経験、人事経験がてんこ盛りの川部さんとお話をしてみたい!という方は、ぜひ各種職サークルイベント等にご参加ください!お待ちしております。
▼川部さんに会えるイベントはこちら!
■KAWABE'S 就活GYM
https://eipro.jp/shokucircle/events/view/kawabegym
■1on1パーソナルトレーニング 職サークル社会人訪問プログラム
https://eipro.jp/shokucircle/events/view/1ON1
インタビューの中で、川部さんと盛り上がった話題は就活の「オンライン化」でした。地方在住学生にとって機会の増大や交通費負担の軽減など、もちろんよい面もたくさんありますが、一方で失われていくものもあります。例えば「体験」の欠如。学生が慣れないスーツを着て、会社の場所を調べて、緊張しながらエレベーターに乗って・・・という「リアルな体験」の積み重ねは、社会人に近づいていく行為そのものでもあって、就活が終わるころには見違えるように「社会人の顔」になっていきます。そんな学生の姿をずっと見てきた川部さんだからこそ、「企業は学生をもっと大人として扱うべき」とおっしゃいます。学生に迎合しない企業。そして社会に自らの足で飛び込んでいく学生。そんな、よりよい就職と採用の「あり方」を考えている人事がいるヨコソーさん。改めて魅力的な企業だなと思いました。